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2015年 第4期 エレミヤ書
第2課 内外(ないがい)における危機(きき)
1.はじめに 10月3日(安息日午後)
エレミヤが預言者(よげんしゃ)として、神様の働きを始めた最初のころ、ユダ王国は国の外側(そとがわ)から来る問題に出会(であ)っていました。それは、外国からの攻撃(こうげき)です。ユダ王国の周(まわ)りにはエジプト、バビロン、アッシリアといった力を持った国々(くにぐに)がありました。そうした周りの国々からユダ王国はいろいろと悩まされていました。つまり、自分の国の外側から来る危機です。
しかし、ユダ王国はもっと大きな問題を、自分の国の内側(うちがわ)に持っていました。それは、国の王様や宗教の先生たちが、神様の教えに従わないで、正しくないことを行(おこな)ったり、神様ではない偶像(ぐうぞう)を礼拝したりしていたことです。国のリーダーたちがそんな風(ふう)になってしまうと、国民全体が悪いほうに流されて行きます。神様の教えに従わずに悪いことをし続けていると、どのようなことになってしまうかということを、エレミヤのような預言者たちが注意しても、たくさんの人たちがその注意の言葉を聞かなくなってしまいました。罪を犯すことは、それだけでもひどいことですが、罪から離れようと思わなくなってしまうことは、もっと大きな問題です。それこそが、ユダ王国が抱(かか)えていた内側からくる危機でした。
2.歴史概観(れきしがいかん) 10月4日(日曜日)
旧約聖書に書かれている、イスラエル民族の歴史を振(ふ)り返(かえ)ってみると、内側と外側からの危機にくり返し出会(であ)っていることがわかります。モーセの時代に、イスラエル民族は、奴隷(どれい)だったエジプトから救い出されて、カナンの地に入りました。カナンの地に入ると間(ま)もなく、そこで平和に暮(く)らしていく中でたくさんの子供たちが生まれました。つまり、自分たちは神様から救い出されたのだということを、知らない新しい世代(せだい)の人たちです。旧約聖書の士師記(ししき)に書かれている時代(じだい)のイスラエルは、こういう人たちばかりでした。それで、たくさんの人たちが、神様の教えに従わなくなりました。そのせいで人々はいろんな危機にあうことになります。でも、そのようなイスラエルでも、神様は見捨(みす)てずに、危機から助けるために、士師(しし)という特別な助ける人を送られました。
士師の時代のあと、サウル王、ダビデ王、ソロモン王の時代には、イスラエルは1つの国として、平和と豊(ゆた)かさを楽しみました。しかし、ソロモン王が死んだあと、国は2つの国に分かれてしまいました。ソロモンが国民をきびしく働(はたら)かせたり、たくさんの税金を取り立てたことで、人々の不満が高まったことが、大きく影響(えいきょう)したようです。
3.二つの王国(おうこく) 10月5日(月曜日)
ソロモン王が亡(な)くなったあと、イスラエルの国は、北王国(きたおうこく)イスラエルと南王国(みなみおうこく)ユダに分かれてしまいました。国が二つに分かれてから、民はどんどん悪くなっていきます。
まず、北王国イスラエルでは、最初の王ヤラべアムが金の子牛(こうし)を作って、公(おおやけ)に偶像(ぐうぞう)礼拝を民に勧(すす)めたことが、後(のち)の時代にまで影響を与えて、国全体が神様から離れていってしまいました。その結果、北王国イスラエルは、紀元前722年にアッシリアによって滅ぼされてしまいます。
南王国ユダは、北王国が滅(ほろ)びたころ、北王国ほど悪くはありませんでした。また、何人(なんにん)かの善(よ)い王様もいました。けれども、南王国ユダでもやはり悪い王様が続きました。ユダ王国も、神様から離れて悪いことを続けていると、北王国のように滅(ほろ)んでしまうことを知っておられた神様は、エレミヤやほかの預言者を送って、悪いことをやめて神様に立ち返るように、働きかけられました。
4.二つの悪(あく) 10月6日(火曜日)
エレミヤが預言者としての働きを始めた時代は、北王国イスラエルが滅んで、南王国ユダにも同じような危機が近づいているような時代でした。放(ほう)っておくと北王国イスラエルと同じように、国全体が神様から離れて、国が滅んでしまう方向(ほうこう)にどんどん落ちていってしまいそうでした。神様はエレミヤを通して、その頃(ころ)の民の悪い状態を次のように言っています。「まことに、わが民は二つの悪を行(おこな)った。生ける水の源(みなもと)であるわたしを捨てて、無用の水溜(みずた)めを掘(ほ)った。水をためることのできない、こわれた水溜(みずた)めを」(エレミヤ2:13)。
つまり、ユダ王国の行(おこな)った2つの悪とは、まことの神様を捨てたこと、そして、命を与えることもできない、神様ではないものに頼(たよ)ったことでした。このようにして「彼らは空(むな)しいものの後(あと)を追(お)い、空しいものとなってしまった」(エレミヤ2:5)のです。
5.バビロンの脅威(きょうい) 10月7日(水曜日)
エレミヤが預言者としての働きを始めたころ、バビロンがどんどん力をつけてきていました。このバビロンがユダ王国に攻(せ)めてきて、ユダ王国をバビロンの国の一部にしてしまいました。実(じつ)はバビロンからユダ王国が攻められたことは、神様がゆるしておられたことでした。ユダ王国が神様から離れて悪いことをし続けているので、神様はバビロンにユダ王国を攻めさせ、滅ぼそうとされたのです。しかし、実際(じっさい)にこのことをなさる前に、神様は、エレミヤを通して、罪から離れて神様に立ち返るようにとメッセージを送りました。そのメッセージを聞いても、ユダ王国のリーダーたちは、自分たちは神様の特別な民だから、神様がちゃんと守ってくださるはずだ、と言って、罪から離れようとしませんでした。
6.偽(いつわ)りの誓(ちか)いをする 10月8(木曜日)
エレミヤ5:2には、「『主は生きておられる』と言って誓(ちか)うからこそ、彼らの誓いは偽りの誓いとなるのだ」と書かれています。これは、民は主の名をつかって誓うけれども、実際(じっさい)には神様の言うことに逆(さか)らっていたので、誓った最初からうそをついているのと同じことだということです。神様の名前を出すことで、自分は神様にちゃんと従っている者だと見せかけていたのでしょうか。
また、エレミヤ7:4には「主の神殿(しんでん)、主の神殿、主の神殿という、むなしい言葉に依(よ)り頼(たの)んではならない」と書かれています。民は、神様の神殿がエルサレムにあるから大丈夫(だいじょうぶ)だ、と考えていたのでしょうか。神殿をお守りのように考えていたのでしょうか。しかし、実際には神殿がユダの人々を守ってくれるのではなくて、神様の言葉に心から従うことによって、神様の守りの中に生きることができるはずだったのです。